はじめに
「手作りごはんって、犬にあげても大丈夫?」
「ドッグフードのほうが
栄養バランスがいいんじゃない?」
「シニアになってドライフードを食べなくなったけど、
何をあげたらいいの?」
動物病院でも、
食事についての相談は本当にたくさんあります。
特に多いのが、
「ドライフードを食べなくなってしまいました」
という相談。
「なんとかドライフードを食べさせなきゃ」と、
一生懸命ふやかしたり、
トッピングしたり、
何種類ものフードを試したりしている
飼い主さんもいます。
もちろん、
総合栄養食のドライフードには
大きなメリットがあります。
必要な栄養をとりやすい。
保存しやすい。
量を管理しやすい。
とても便利な食事です。

でも私は、
「犬は絶対にドライフードじゃなきゃダメ」
とは思いません。
手作りごはんには、
ドライフードにはない良さもあるからです。
そして何より、
シニア犬のごはんに、一つの正解はありません。
ドライフード。
ウェットフード。
手作りごはん。
それぞれの良いところを、
その子の体調や生活環境に合わせて取り入れていい。
今回は、現役動物看護師の私が、
手作りごはんのメリット・デメリットと、シニア犬だからこそ大切にしてほしい「食事の考え方」
についてお話しします。
まず伝えたい。
「ドライか手作りか」の
二択にしなくていい

手作り食について話すと、
「手作りのほうが健康なんですか?」
と聞かれることがあります。
でも私は、
手作り=健康
ドライ=ダメ
だとは思っていません。
反対に、
手作り=危険
ドライ=絶対安心
という考え方にもしたくありません。
大切なのは、
「今のこの子に何が合っているのか?」です。
例えば、
若い頃はカリカリのドライフードを
喜んで食べていた子でも、
シニアになると食べ方が変わることがあります。
硬いものが食べにくくなる。
食欲が落ちる。
香りを感じにくくなる。
水分をあまりとらなくなる。
病気が見つかる。
そのときまで、
「今までドライだったから、これからも絶対ドライ!」
と決める必要はないと思うんです。
逆に、ドライフードを喜んで食べていて、
体調も体重も問題ない子を、
「シニアだから手作りにしなきゃ!」
と無理に変更する必要もありません。
その子の「今」に合わせて変えていけばいい。
私は、それがシニア犬の食事では
とても大切だと思っています。
手作りごはんのメリット
① 水分を一緒にとりやすい

手作りごはんの大きなメリットの一つが、
食事と一緒に水分をとりやすいこと。
シニア犬では、
若い頃と比べて水分摂取について
気をつけたい子もいます。
そんなとき、
食材を煮たり、
スープ状にしたり、
水分量を調節したり。
手作りなら、その子に合わせて工夫できます。
もちろん、
病気によって水分管理が必要な場合もあるので、
持病がある子は獣医師に相談してください。
メリット② 食べやすさを変えられる
シニア犬になると、
今まで普通に食べられていたものが、
食べにくくなることがあります。
そんなとき、手作りごはんなら、
- 柔らかく煮る
- 細かくする
- つぶす
- 水分量を変える
- 温度を調整する
など、
その子の「食べる力」に合わせて変えやすい
というメリットがあります。
これはシニア犬にとって大きなポイントです。
ただし、
「食べにくそうだから柔らかくすればいい」
と決めつけないでください。
口が痛い。
飲み込みに問題がある。
体調が悪い。
という可能性もあります。
食べ方そのものが変わった場合は、
その原因を確認することも大切です。
メリット③ 好みに合わせやすい

「昨日まで食べていたのに、今日は食べない」
シニア犬では、こんなこともあります。
手作りなら、
今日はお魚。
別の日はお肉。
食材の組み合わせを変える。
香りや温度を変える。
など、その子の好みに合わせやすいのもメリットです。
そして私は、
いろいろなものを食べられることも、
犬にとって一つの幸せではないか
と思っています。
もちろん、安全性や栄養を考えることが前提です。
でも、ごはんは栄養を摂取するだけの
時間ではありません。
「今日のごはん何かな?」
「これ、おいしい!」
そんなふうに食事を楽しめることも、
シニア犬の生活の質を考えるうえで
大切にしたいことです。
メリット④ 食材を自分で選べる

手作りごはんでは、
何を使って作ったのか自分で把握できる
というメリットもあります。
お肉。
魚。
卵。
野菜。
穀類。
など、食材を自分で選び、
愛犬の好みや体調を考えながら調理できます。
ただし、
「自然な食材だから安全」
とは限りません。
人には問題のない食材でも、
犬には適さないものがあります。
また、
病気によって控えたほうがよい栄養素や
食材が出てくることもあります。
「体に良さそう」というイメージだけで
選ばないことも大切です。
じゃあ、手作りごはんのデメリットは?
ここまで読むと、
「やっぱり手作りっていいじゃん!」
と思うかもしれません。
でも、もちろんデメリットもあります。
ここを知らずに始めてしまうと、
愛犬のために作っていたはずの食事が、
長期的には必要な栄養を満たせていなかった
ということにもなりかねません。
だから、
メリットと一緒に知っておいてください。
デメリット① 栄養バランスを整えるのが難しい

手作りごはんで一番注意したいのが、
栄養バランスです。
犬に必要なのは、お肉と野菜だけではありません。
タンパク質や脂質だけでなく、ビタミン、ミネラル、
必須脂肪酸など、さまざまな栄養素が必要です。
特に長期間、完全手作り食だけを主食にする場合、
「なんとなくバランスが良さそう」
だけで作り続けることはおすすめできません。
でも「毎食完璧じゃなきゃ」と苦しくならないで
ここは、私が飼い主さんに伝えたいことです。
ドライフードの大きなメリットとして、
必要な栄養をとりやすい
ということがあります。
だから、
「手作りは栄養が偏るから怖い」
と思う方もいると思います。
でも、
私たち人間だって、毎日毎食、
すべての栄養素を計算して完璧な食事を
作っているわけではありませんよね?
今日はお魚。
明日はお肉。
野菜もいろいろな種類を食べる。
そうやって、
食事全体でいろいろな栄養源を取り入れています。
手作りごはんでも、
同じ食材ばかりに偏らず、
犬が安全に食べられるさまざまな食材を取り入れる
という考え方は大切です。
食材が変われば、含まれている栄養素も変わります。
そして、食べられるものの種類が増えることは、
食事の楽しみにもつながります。
ただし、ここだけは誤解しないでください。
「いろいろな食材を食べれば、
それだけで必要な栄養がすべて整う」
という意味ではありません。
犬と人では必要な栄養素や必要量が違います。
特に完全手作り食を長期間続ける場合は、
カルシウムなど不足しやすい栄養素が
出る可能性があります。
だからこそ、
完璧を求めすぎない。
でも、必要な栄養はきちんと考える。
この両方が大切です。
デメリット② 手間と時間がかかる
手作りごはんは、
食材を買う。
調理する。
量を考える。
保存する。
という手間がかかります。
毎日のことなので、
想像以上に負担になることもあります。
だから私は、
「愛犬のためだから、毎日絶対作らなきゃ!」
と頑張りすぎなくていいと思っています。
飼い主さんが疲れ切ってしまったら、
長く続けるのは難しいですよね。
ドライフードを使う日があってもいい。
ウェットフードに頼ってもいい。
手作りと組み合わせてもいい。
続けられることも、食事選びの大切な条件です。
デメリット③ 病気がある子は注意が必要

特にシニア犬では、ここが重要です。
腎臓病。
心臓病。
尿石症。
消化器疾患。
食物アレルギー。
など、病気によって食事内容を
調整する必要があることがあります。
その場合、
「体に良さそうだから」
と自己流で食材を増やしたことで、
治療方針に合わない食事になる可能性もあります。
持病がある子や療法食を食べている子は、
手作り食を取り入れる前に、
かかりつけの獣医師へ相談してください。
「ドライ+手作り」でもいい
ここまで読んで、
「完全手作りはちょっと難しそう…」
と思った方もいるかもしれません。
でも、
0か100かで考えなくて大丈夫です。
例えば、
いつものフードを基本にして、
食事全体の栄養バランスを崩さない範囲で
安全な食材を取り入れる。
ウェットフードを組み合わせる。
愛犬の状態に合わせて、
獣医師や栄養の専門家と相談しながら
手作り食を取り入れる。
そんな方法もあります。
ただし、トッピングや間食を増やすほど、
もとの総合栄養食だけで設計された
栄養バランスからは離れていきます。
「少しだから何を足しても大丈夫」ではなく、
量や内容にも気を配ること。
特に持病がある子は確認してから取り入れてください。
「ドライを食べない=もっとおいしいもの」だけにも注意
ここも大切です。
ドライフードを食べなくなったとき、
「じゃあ手作りにしてみよう!」
と考える前に、
なぜ食べなくなったのか?
も考えてみてください。
歯が痛い。
口が痛い。
食べる姿勢がつらい。
体調が悪い。
病気が隠れている。
そんな可能性もあります。
特に、
「昨日まで食べていたのに急に食べなくなった」
「体重も減ってきた」
「元気もない」
という場合は、
食事を変更して様子を見るだけではなく、
動物病院に相談しましょう。
私がシニア犬の食事で大切にしたいこと

動物病院で働いていると、
「何を食べさせるのが正解ですか?」
と聞かれることがあります。
でも私は、
一つの食事だけを「正解」にする必要は
ないと思っています。
健康状態。
年齢。
食欲。
食べる力。
生活環境。
そして、飼い主さんがどこまでできるのか。
全部違います。
だから、
その子とその家族に合った方法を探せばいい。
ドライフードが合っているなら、それでいい。
手作りが合っているなら、それも選択肢。
両方を上手に使うのも一つの方法。
その時々の愛犬の状態に合わせて、
変えていっていいんです。
シニア犬だからこそ
「食べる幸せ」を忘れないで
シニア期になると、
できなくなることが少しずつ増えていくことがあります。
長い距離を歩けなくなる。
昔ほど遊ばなくなる。
寝ている時間が増える。
そんな中でも、
ごはんの時間を楽しみにしている子はたくさんいます。
だから私は、
栄養だけではなく、
「食べる幸せ」
も大切にしたいと思っています。
いろいろな香りを楽しむ。
いろいろな食感を味わう。
好きなものを見つける。
「おいしいね」と飼い主さんと一緒に過ごす。
それも、シニア犬の大切な時間です。
栄養のためだけに食べるのではなく、
食べることそのものが楽しみになる。
そんな食事を目指してほしいと思っています。
今日からできること

「手作りごはん、ちょっとやってみたいな」
と思ったら、いきなり全部を変える必要はありません。
まずは、
今の愛犬の食事を見直すところから始めてみてください。
☑ 今のごはんを喜んで食べている?
☑ 体重は維持できている?
☑ 筋肉は落ちていない?
☑ 食べにくそうにしていない?
☑ 持病はない?
☑ 便の状態は安定している?
☑ 水分はとれている?
そして、
「この子にとって、今の食事は合っているかな?」
と考えてみてください。
完全手作り食を長期間続けたい場合は、
自己流だけで組み立てず、
かかりつけの獣医師や犬の栄養に詳しい専門家に
相談するのがおすすめです。
まとめ
手作りかドライかではなく「その子に合っているか」
シニア犬に手作りごはんを与えることは、
一つの選択肢です。
手作りごはんには、
水分をとりやすい。
食べやすさを調整できる。
食材を選べる。
いろいろな食事を楽しめる。
というメリットがあります。
一方で、栄養バランスを整える難しさや、
手間、病気に合わせた調整が必要
というデメリットもあります。
だから、
「手作りが一番!」でも、
「絶対ドライフード!」でもありません。
大切なのは、
今のこの子に何が合っているのか。
それを考えることです。
おわりに

私は、
いろいろなものを食べられることは、
幸せなことだと思っています。
もちろん、
何でも好きなだけ与えていいという意味ではありません。
必要な栄養を考えること。
安全な食材を選ぶこと。
病気があるなら、その子の体に合わせること。
これはとても大切です。
でも、
「栄養が完璧じゃなきゃ」
「絶対このフードじゃなきゃ」
と、ごはんの正解探しばかりになってしまうのも、
少し違うのではないかなと思います。
シニア犬と過ごせる時間は、
一日一日が大切です。
だからこそ、
健康を守るための栄養と、食べることを楽しむ幸せ。
私は、どちらも大切にしてほしい。
ドライフードの日があってもいい。
手作りの日があってもいい。
その子の状態に合わせて組み合わせてもいい。
愛犬が、
「今日のごはん、おいしい!」
と思える時間を、
できるだけ長くつくってあげたいですね。
そして飼い主さんも、
完璧を目指しすぎなくて大丈夫。
その子の体を見ながら、
その時々で一番いい方法を一緒に探していきましょう。
次回は、
「シニア犬が水を飲まなくなった時はどうする?
水分補給の工夫10選」
をテーマにお届けします。
また次の記事でお会いしましょう。
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